2008年03月08日

10:しゃべる岩!

「出口か?」
 つばさは、光の方向に急いだ。これで外に出られる。
 そうっと顔を出すと、2頭の竜が頭上に飛び回っていた。つばさはあわてて
頭を引っ込めた。竜たちには気付かれていない。もう1度顔を出し、上を見上げると、
頂上まではあと100メートルほどという所まで来ていた。

「あっ!」
 思わず大きな声が出た。つばさは、またあわてて頭を引っ込めた。
「何か見えたの?」
「ああ。あの竜たち…。それから頂上が見えた。…そして、お城みたいなものが…。」
 つばさが声を上げた理由はそれだった。何と山の頂上にはお城が建っていたのだ。
つばさは腕を組み、何か考えるように歩き回った。
「どうしたのさ。」
「これからどうするか、考えてんの。」
 つばさはそう言って、しばらく歩き回った。

「いて!」「イテ。」
 つばさは何かにつまづいた。
「何でポチまで痛がるのさ。」
「オイラ何も言っちゃいないよ。」
 つばさが足元に目をやると、岩がゴソッと動いた気がした。つばさは剣を構えた。
「どうしたのさ。」
 ポチは何が起こったのか分からなかった。

ガタッ!

 今度は間違いなく岩が動いた。それは、ポチにも確認できた。
つばさの右手に力が入る。すると、
「そこに…誰か…いるのかい?」
 優しい声が聞こえた。岩から聞こえる。つばさは力を抜いた。なおも岩はしゃべった。
「誰かいるなら…返事をしておくれ。」
「ああ、いるよ。」
 つばさは、岩に答えた。
「ああ、その声は…人間かい。この世界のものじゃ…ないね。」
 岩は、つばさたちの理解できる言葉で話しかけている。

「もしかして…その声…、以前わしを助けてくれた…人間かい?いや…それは
もう…何十年か前の…話だ。その子ども…、それとも…そのまた子どもか…?」
 どこかで、聞いたような気がした。そう、おじいさんから聞いた話に似ている。
つばさは問いかけた。

「あなたは…、カメ?」
「そうとも。今はこんな姿じゃがな…。ある日、1人の魔法使いが…この世界に
やってきて…乙姫様を…。城のものたちも…姿を変えられて…しもうた…。
わしも…こんな姿に…。何とか…、ここまで逃げて…来たものの、
完全に岩となり…、動けなくなってしまったと…いうわけじゃ。ところで…、
お前さん…、もしかして光の剣を…持っておるか?」
「持ってるよ。」
 つばさは右手に握りしめられている剣を見つめた。

「そうかぁ。乙姫様の…予言は、当たって…おったんじゃなぁ。」
「予言?!」
「そうとも…。以前わしを助けて…くれた人間に、3つの箱を…渡したのも、
そのためじゃ。いずれ、悪の化身が…この世界に…やってくる。
この世界を…救えるのは、人間界の者…。その者は、光の剣を…持って、
必ず…現れるだろうと…。」

「ぼっぼくのこと?」
 つばさは、驚いた。岩は話を続けた。
「マントは…ないのか?あのマントは…、乙姫様の大切な…マントじゃ。
あれがあれば、竜宮城まで…、あっという間の…はずじゃが…。」
「えっ?」
 マントはじんざにかけてあげた。ここにはない。つばさは、
これまでのことを岩に語った。

「そうかぁ。それは大変な…道のりじゃったのぉ。…あの竜は
乙姫様を…お守りする、タツノオトシゴたちじゃな…。わしも
動けられたら…、助けてやれるのじゃが…。」
 岩は、力なくつぶやいた。

「ギャーーーーーー!」
 洞穴の出口で、金色の目が光った。
「見つかった!」
 つばさは、光の剣を一振りした。光の矢は、簡単にかわされた。
2頭の竜は、つばさたちが出てくるのを待ちかまえている。
「くそっ!」
 つばさは、そう言葉を吐き捨てた。その時、

「ガォーーーーーーー!」
 聞いたことのある雄叫び。間違いない、じんざだ。ポチが顔を出し、
外を見ると、何とじんざが黒いマントをなびかせ、空を走るように飛んでいた。
「わーーーっ!」
 じんざは、あっという間に洞穴に飛び込んできた。そして、
「乗れ、つばさ!」
 じんざは体勢を低くしてこう叫んだ。つばさとポチは反射的にじんざの
背中に飛び乗った。「頼んだぞ!」
 岩は力強く言った。つばさは小さくうなづいた。つばさは、剣を一振りし、
じんざは光の矢とともに、洞穴を飛び出した。じんざは、風のように空を
駆け抜けた。2頭の竜はそのスピードに付いてくることができなかった。
気がつくとつばさたちは、山頂の城の前に立っていた。

Posted by KENZO at 06:27│Comments(2)
この記事へのコメント
今日も仕事中こっそりと…(笑)さらにおもしろくなってきましたね。続きが気になります。
Posted by ピーチ at 2008年03月08日 17:40
ピーチさん

いつもありがとうございます。
いよいよクライマックスです。

これからも、仕事中こっそり(?)楽しんでもらえると、うれしいです。
Posted by KENZOKENZO at 2008年03月10日 04:22
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10:しゃべる岩!
    コメント(2)