2008年03月15日

11:魔女現る!

 城には大きな扉があった。つばさたちは、その前に立っている。
「じんざ、どうして?」
「さぁな。気付いたら無くなっていた。こいつのおかげかもな。」
 じんざは、立派なたてがみにしがみついているタマをチラッと見た。
じんざの言葉はだいぶ伝わりやすくなっていた。

「そのマント、すごいね。」
「ああ、急がねばと思ったら、体が宙に浮いたのだ。あとは、
ここまでひとっ飛びだった。」
 じんざは、鼻を鳴らした。

「さぁ、話は後だ。急ごう、竜が来る。」
 つばさは、そう言い終わると扉に向き直った。すると、
ギーーーーっという音を立てて、扉が独りでに開いた。
つばさたちは導かれるように城の中に入っていた。

「あーーーーーーっ!」
 つばさは、何かを発見した。みらいとおじいさんの2人だった。
「お兄ちゃんーっ!」「つばさー!」
「みらいーーーーっ!じいちゃーーーーん!」
 つばさは、あわてて駆け寄ったが、何かにぶつかって、はじき飛ばされた。
「なっ何だ?」
 よく見てみると、2人はガラスケースのようなものに、閉じこめられている。

「みらい、じいちゃん、伏せて!」
 そう言って、2人が伏せるのを確認すると、つばさは光の剣を力強く振った。
光の矢は、2人に一直線に飛んでいった。これで助けられると思った瞬間、
光の矢はガラスケースのようなものに反射されて、今度はつばさめがけて飛んできた。
 つばさは、間一髪でかわしたが、その先にあった大きな扉が粉々に砕け散った。
その後も剣で斬りつけたり、じんざが爪を立てたり、体当たりしてもびくともしなかった。


「クックックックック…。」
 どこからともなく、薄気味悪い笑い声が城の中に響いた。一同は、
その声の先に視線を集めた。そこには、全身紫色の衣装に身を包み、
見るからに意地の悪そうな顔をしたおばあさんがいた。

『魔法使いだ。』
 そうつばさは直感したが、声には出さなかった。
「わたしは、魔女さ。」
 魔女は自分から話し出した。
「あっああ。カメさんから聞いたよ。」
「あ~ら、会ったのかい。岩にしてやったはずだけど…。まぁいいさ。
ここの姫様はちょっと生意気だったから…。」

 そう言いかけたとき、じんざが一瞬の隙を狙って、魔女に襲いかかった。
魔女はあわてることなく、左手をかざした。左手が緑色の光を放ったかと思うと、
じんざの姿が消え、1匹のネズミが現れた。魔女はネズミを一蹴し、
「勝手に動くからだよ!」
と声をあらげた。黒いマントがハラハラとつばさの前に舞い降りた。
つばさは素早くマントを拾い上げようとしたが、動くのをやめた。とにかく、
みらいとおじいさんは無事だ。今は冷静に様子をうかがおうと決めた。
魔女は、なおも話を続けた。

「あの竜たちはどうだった?強かったろ、えっ?まぁしかし、お前さん、
なかなかおもしろいものを持ってるね。…あと、その『マント』もね。」
 魔女はにやりと笑い、つばさの持っている光の剣と目の前のマントをチラリと見た。
『ヤバイ…』
 つばさは、心の中でつぶやいた。額からは一筋の汗が流れている。その時だった。
「こっち、こっち!」

 ポチが急に叫ぶようにして、走り出した。
「動くなって言ったろーっ!」
 魔女は、ポチめがけて左手をかざした。しかし、ポチの素早い動きで
的が絞れずにいた。ポチは素早く動きながら、つばさに目をやり、
チラチラとマントに視線を送っている。
『そうか!』
 つばさは、声には出さなかったが、ポチの突然の行動の意味を理解した。
そして、手を伸ばしかけたとき、

「ちっ、うっとうしい犬だねぇ。」
 魔女は面倒くさそうにそう言うと、今度は右手をポチの方に向けた。
一瞬、指先が光ったように見えたと思った瞬間、5本の光の矢がポチめがけて放たれた。
5本のうちの1本がポチの左足に命中した。あっという間の出来事に
つばさは動くことができず、ポチの作ったチャンスを無駄にした。
ポチの足からは大量の血が流れている。

「さぁて、邪魔者が減ってきたねぇ。」
 魔女は、随分うれしそうに話している。笑顔の薄気味悪さが増した。
「おやっ?あんた、そんなところにいたのかい?」
 言葉の意味は分からなかったが、一瞬、つばさから視線がはずれた。
今度はそれを見逃さなかった。つばさは、転がるようにして、
マントをわしづかみ、光の剣を魔女に向けて一振りした。

「生意気だねぇ!」
 紫色の服は引き裂かれたが、光の矢は魔女の体をスルリと通り抜けた。
魔女はすぐさま右手をかざした。5本の光の矢は、つばさをとらえることは
できなかった。マントを身につけたつばさの動きは風のようだった。
つばさは、何回か魔女を斬りつけたが、その度に、光の剣は魔女の体をスルリと抜けた。

 なおも右手をかざす魔女の光の矢の1本がみらいとおじいさんに向けて飛んでいった。
しかし、バチンと音を立てて反射した。何と運が悪いのであろう。
その1本がつばさをとらえた。つばさの左の脇腹から血が噴き出した。
つばさはちょうど、タマの目の前で倒れた。

Posted by KENZO at 07:39│Comments(0)
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