2008年02月23日
8:光!
つばさは、じんざの隣でどうすることもできずに、座り込んでいた。
すでに1つ目の太陽が地平線の向こうに顔を出そうとしている。
「ん?」
誰かが服のすそを引っ張っていた。ポチとタマだ。ポチは散らばっていた
地図やマントや箱を集めてくれていた。
「元気出そうぜ!」
ポチはつばさの顔をペロペロとなめた。タマはじんざに寄り添うように
しゃがみこんだ。じんざに動く気配はなかった。つばさはしばらく
考え込むかのように押し黙っていたが、何かを決心したかのように、
スクッと立ち上がった。そして、
「行こう!」
と力強く言った。
「そうこなくっちゃ!」
つばさは、箱とマントだけを拾い上げた。
「地図はどうする?」
ポチが拾ってきてくれた地図に目をやったが、地図は真っ白になっていた。
「これじゃ、持っていってもしょうがないか。」
ポチはポツリとつぶやいた。つばさは、黒マントをバサッと広げ、
もうピクリとも動かないじんざにかぶせた。
「行ってくるね。」
そうじんざに語りかけるように言うと、くるりと向きを変え、森の中に入っていった。
それに続いてポチも森の中に姿を消した。しかし、タマはじんざのそばから離れようとはしなかった。
森の中は、夜のように暗かった。生い茂った葉で、太陽の光が届かないためだ。
さらにやっかいなのは、目指すべき山頂がまるで見えないことだ。つばさは、
自分が真っ直ぐに進んでいることだけを信じて歩き続けた。しばらくして、ポチが足を止めた。
「さっきから同じ所を歩いてないかい?」
つばさもそう感じていた。しかし、今までの道のりもそうだったと自分に言い聞かせて、
「もう少し行ってみよう!」
とポチに言った。その言葉に力強さはなかった。つばさは、持っていた箱を岩の上に置いた。
「これでわかるさ。」
そう言って、見えない山頂を目指して、再び歩き出した。
不安は見事に的中した。つばさたちの目の前にあの箱が現れたのだった。
つばさは小さく舌打ちして、今度は別の方向に歩き出した。しかし、
数十分後、またこの場所に戻ってきた。
「やっぱり、地図がないのは痛いなぁ。」
ポチが冷静につぶやいた。つばさの手は震えていた。拳をギュッと握りしめたかと思うと
「くそっ!」
という言葉とともに赤い箱を思い切り蹴り飛ばした。箱は鈍い音を立てて壊れてしまった。
「そう苛立つなよ。おいらだって同じ気持ちさ。とにかく、これからどうするかを考えようぜ。」
つばさは、ポチにそう言われて、この世界に来たときのことを思い出した。
怒っても、苛立っても何も解決しない。冷静になって考えてみること、
行動してみることを。だが、みらいとおじいさんが連れ去られ、じんざもいなくなった今、
焦る気持ちはなかなかおさまらなかった。特にあの竜が頭から離れないのだ。
2人は今、どうなっているのか。無事なのか、それとも…。そんなことを考えている間にも、
時間は無情にも過ぎていった。
つばさは、自分が蹴り飛ばして壊してしまった箱を拾い上げた。ふたは今にも
取れてしまいそうにぶら下がっている。
「ん?」
そのふたの内側に目が止まった。ふたの隙間に何か見える。何とふたが二重に
なっていたのだ。つばさは蹴り飛ばしたことでズレたのだった。
「何かあったのかい?」
ポチがつばさが何かゴソゴソやっているのに気付いた。
「なっ何だ、これ?」
ふたの中から、短い剣のようなものが出てきた。それにしても持つところに比べて、
刃の部分が短すぎる。これでは武器として使えそうにない。それにもう一つ、
持つところには穴が空いているのだ。まるで何かの球が入るかのように…。
「…?!」
つばさは胸のペンダントに目をやった。球の大きさは、この穴とほぼ同じ大きさだ。
そして、じんざと出会うことになった不思議な出来事が、つばさの頭の中をよぎった。
何か起こるかも知れない。しかも良いことが。つばさはわずかな希望を抱いて、
ペンダントに埋め込まれた球を無理矢理取り外した。そして、そのまま剣に球を押し込んだ。
その瞬間、球が輝きだし、短かった刃から光の刃が伸びてきた。つばさは驚いて
声も出せなかったが、両手で剣をしっかり握りしめていた。剣は輝きを増し続け、
その輝きが最高潮に達したかと思ったその時、
「わーーーーーーーーっ!」
刃の先から光の矢が飛び出し、森を突き破って、山頂までの一本道を造り出した。
「すっ、すっげーーー。」
ポチは目を丸くして言った。これで道は開けた。つばさは剣を片手に、
山頂目指して一気に駆け出した。ポチはその後を必死に追いかけた。
光の矢のおかげで山頂までは一直線だった。目の前の木々や枝葉を光の剣で切り裂き、
ただただ真っ直ぐに進んだ。
『待ってろよ!』
つばさは、心の中でつぶやき、不気味にそびえ立つ山を睨みつけていた。
すでに1つ目の太陽が地平線の向こうに顔を出そうとしている。
「ん?」
誰かが服のすそを引っ張っていた。ポチとタマだ。ポチは散らばっていた
地図やマントや箱を集めてくれていた。
「元気出そうぜ!」
ポチはつばさの顔をペロペロとなめた。タマはじんざに寄り添うように
しゃがみこんだ。じんざに動く気配はなかった。つばさはしばらく
考え込むかのように押し黙っていたが、何かを決心したかのように、
スクッと立ち上がった。そして、
「行こう!」
と力強く言った。
「そうこなくっちゃ!」
つばさは、箱とマントだけを拾い上げた。
「地図はどうする?」
ポチが拾ってきてくれた地図に目をやったが、地図は真っ白になっていた。
「これじゃ、持っていってもしょうがないか。」
ポチはポツリとつぶやいた。つばさは、黒マントをバサッと広げ、
もうピクリとも動かないじんざにかぶせた。
「行ってくるね。」
そうじんざに語りかけるように言うと、くるりと向きを変え、森の中に入っていった。
それに続いてポチも森の中に姿を消した。しかし、タマはじんざのそばから離れようとはしなかった。
森の中は、夜のように暗かった。生い茂った葉で、太陽の光が届かないためだ。
さらにやっかいなのは、目指すべき山頂がまるで見えないことだ。つばさは、
自分が真っ直ぐに進んでいることだけを信じて歩き続けた。しばらくして、ポチが足を止めた。
「さっきから同じ所を歩いてないかい?」
つばさもそう感じていた。しかし、今までの道のりもそうだったと自分に言い聞かせて、
「もう少し行ってみよう!」
とポチに言った。その言葉に力強さはなかった。つばさは、持っていた箱を岩の上に置いた。
「これでわかるさ。」
そう言って、見えない山頂を目指して、再び歩き出した。
不安は見事に的中した。つばさたちの目の前にあの箱が現れたのだった。
つばさは小さく舌打ちして、今度は別の方向に歩き出した。しかし、
数十分後、またこの場所に戻ってきた。
「やっぱり、地図がないのは痛いなぁ。」
ポチが冷静につぶやいた。つばさの手は震えていた。拳をギュッと握りしめたかと思うと
「くそっ!」
という言葉とともに赤い箱を思い切り蹴り飛ばした。箱は鈍い音を立てて壊れてしまった。
「そう苛立つなよ。おいらだって同じ気持ちさ。とにかく、これからどうするかを考えようぜ。」
つばさは、ポチにそう言われて、この世界に来たときのことを思い出した。
怒っても、苛立っても何も解決しない。冷静になって考えてみること、
行動してみることを。だが、みらいとおじいさんが連れ去られ、じんざもいなくなった今、
焦る気持ちはなかなかおさまらなかった。特にあの竜が頭から離れないのだ。
2人は今、どうなっているのか。無事なのか、それとも…。そんなことを考えている間にも、
時間は無情にも過ぎていった。
つばさは、自分が蹴り飛ばして壊してしまった箱を拾い上げた。ふたは今にも
取れてしまいそうにぶら下がっている。
「ん?」
そのふたの内側に目が止まった。ふたの隙間に何か見える。何とふたが二重に
なっていたのだ。つばさは蹴り飛ばしたことでズレたのだった。
「何かあったのかい?」
ポチがつばさが何かゴソゴソやっているのに気付いた。
「なっ何だ、これ?」
ふたの中から、短い剣のようなものが出てきた。それにしても持つところに比べて、
刃の部分が短すぎる。これでは武器として使えそうにない。それにもう一つ、
持つところには穴が空いているのだ。まるで何かの球が入るかのように…。
「…?!」
つばさは胸のペンダントに目をやった。球の大きさは、この穴とほぼ同じ大きさだ。
そして、じんざと出会うことになった不思議な出来事が、つばさの頭の中をよぎった。
何か起こるかも知れない。しかも良いことが。つばさはわずかな希望を抱いて、
ペンダントに埋め込まれた球を無理矢理取り外した。そして、そのまま剣に球を押し込んだ。
その瞬間、球が輝きだし、短かった刃から光の刃が伸びてきた。つばさは驚いて
声も出せなかったが、両手で剣をしっかり握りしめていた。剣は輝きを増し続け、
その輝きが最高潮に達したかと思ったその時、
「わーーーーーーーーっ!」
刃の先から光の矢が飛び出し、森を突き破って、山頂までの一本道を造り出した。
「すっ、すっげーーー。」
ポチは目を丸くして言った。これで道は開けた。つばさは剣を片手に、
山頂目指して一気に駆け出した。ポチはその後を必死に追いかけた。
光の矢のおかげで山頂までは一直線だった。目の前の木々や枝葉を光の剣で切り裂き、
ただただ真っ直ぐに進んだ。
『待ってろよ!』
つばさは、心の中でつぶやき、不気味にそびえ立つ山を睨みつけていた。
Posted by KENZO at 06:52│Comments(0)