2008年03月22日

12:タマの正体!

「これで最後だねぇ。」
 そう言い終えると、魔女はゆっくり右手を上げ、人差し指をつばさに向けた。
『もうダメだ!』
 そう思った瞬間、
「ワン、ワン、ワンッ!」
 ポチが魔女の指を食いちぎった。

「ギャーーーーーーーーッ!」
 魔女の悲鳴が響いた。ポチの左足から血は流れていなかった。
それどころか、傷口が見当たらない。気付くとタマが、つばさの
脇腹をなめている。痛みが無くなり、血が止まった。
じんざやポチが蘇った理由はこれだ。魔女の指からは、緑色の血が流れていた。

「やってくれたねぇ。」
 魔女はポチではなく、タマを睨みつけていた。
「だからお前は気に入らないんだよ。乙姫ーーーーーーーーーっ!」

 何と、タマの正体は、あの乙姫だったのだ。つばさとポチは驚いたが、
それどころではない。この状況を何とかしなければならない。
魔女は体を震わせながら、1歩ずつタマに近づいた。タマだけを睨みつけながら。
つばさは思い切って、魔女の体を光の剣で斬りつけたが、切り裂いたのは服だけだった。
そんなつばさを無視して、魔女はタマの目の前まできていた。
左手をかざした魔女の目の前から、タマの姿が消え、1人の女性が現れた。

「何か…言い残すことはないかい…。」
 魔女は声を震わせながら聞いた。
「3つ目の箱…。」
 その女性はそう言うと目を閉じた。
 つばさの頭の中で一瞬のうちにいろんな事が思い出された。魔女の右手が上がり、
中指が女性の胸に向けられた。
「ワン!」
 ポチが勢いよく飛びかかったが、今度は左手であっさりかわされた。そして、
魔女の中指が光りはじめた。

「わかったーーーーーーっ!」
 つばさは、ガラスケースの前に一気に駆け寄り、マントを取るとガラスに押しつけた。
「伏せてーーーっ!」
 その言葉と同時に、光の剣を一気に振り抜いた。
「ガシャーーーーン!!」
 ものすごい音を立てて、ガラスケースが砕け散った。これには魔女も驚き、振り返った。
「じいちゃん、箱!」
 隠し持っていた箱を、つばさは奪うようにつかみ取ると、思い切り開けた。
 一瞬の出来事だった。箱から白い煙が出てきたかと思うと、
魔女の周りを取り囲むようにまとわりついた。つばさは、切り裂かれたマントを素早くまとうと、
一気に魔女に駆け寄った。

「やーーーーーーーーーーーっ!」
 力一杯振り抜いた光の剣が、魔女の体を真っ二つにした。
 魔女の体は、音も立てずに床に転がった。


 しばらく時間が止まったかのように、誰一人動かなかった。

「ありがとう!つばさくん。」
 最初に口を開いたのは、タマの代わりに現れた美しい女性だった。
「わたしは乙姫です。久しぶりですね、ひかるさん…でしたよね。」
 乙姫は、おじいさんを見て、優しく微笑んだ。

「キュ~。」
 黒と金のかわいいタツノオトシゴが小さな翼をパタパタと羽ばたかせて、
乙姫に近づいてきた。気付くと、ヨロヨロと立ち上がるじんざの姿もあった。
「みらい、じいちゃん!」
 我に返ったつばさは、2人に駆け寄り、抱き合った。
「つばさ、よくやったのぉ。ガラスの囲いが光を反射したのを見て、もうダメかと思ったわい。」
「うん。理科の勉強を思い出したんだ。黒色は光を通さないから、もしかしてって思って…。」
「うん。うん。」
 おじいさんは、優しくうなづいた。みらいもおじいさんの腕の中で、つばさを誇らしげに見ていた。

 乙姫は、これまでの出来事、魔女のこと、3つの箱のことをわかりやすく、
まとめて話をしてくれた。
 そして、全てを話し終えると、
「お別れですね。本当にありがとう。」
と一言告げ、奥にある大きな鏡を指さした。

「ここを通れば、もとの世界に帰れますよ。」
 つばさは、光の剣を乙姫に手渡した。
「じんざはどうするの?」
 つばさは、じんざを見つめた。
「わたしか?もうサーカスには戻れない。乙姫様さえよければ、ここにいるよ。」
 じんざは乙姫を見てこう言った。乙姫は優しくうなづいた。

「さぁ、行くか。」
 おじいさんは、2人の肩をポンと叩き、鏡に向かって、ゆっくり歩き出した。
その時、鏡が一瞬光ったように見えたかと思うと、

「ガシャーーーーン!」
 大きな音を立てて、鏡が粉々に砕けた。一同が振り返ると、
半分になった体を引きづり上げ、右手を伸ばす魔女がいた。
魔女は薄気味悪くニヤリと笑みを浮かべ、バタリと息絶えた。

Posted by KENZO at 07:27│Comments(1)
この記事へのコメント
次回、最終話!
1つの箱からはじまった物語ですが、どんな結末を迎えるのか…。
Posted by KENZOKENZO at 2008年03月22日 07:32
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12:タマの正体!
    コメント(1)